[年中行事]重陽の室礼
古来より中国では、陰陽説による陽数(奇数)の極である九が二つ重なる九月九日を節日として祝う風習がありました。
菊の花を飾り、菊酒を飲むと長寿になるといわれ、またこの日は登高といって山に登る行事があり、茱萸(しゅゆ)の実を身につけると邪気を祓うとされました。
菊にまつわる長寿や不老不死の故事もいくつか残されています。
この日に菊をもちいる風習は、早くより日本の宮中行事に取り入れられ「菊合わせ」といって菊を愛でる宴が天武天皇十四(686)年に行われたのが初めといわれています。
平安初期、九月九日は重陽節として宮中の儀礼となり「観菊の宴(重陽の宴、菊見の宴)」が催されました。杯に菊花を浮かべたお酒(菊酒)を飲むほか、「菊のきせ綿」といって、菊綿(前の晩に菊にかぶせて露でしめらせた綿)で身体を拭いて長寿を願ったりしました。
江戸時代に五節供に制定され、五節供の中で最も公的な性質を備えた行事になり、武家ではこの日、菊の花をお酒にひたして飲み祝ったそうです。その後、民間でも一部では重陽の節供として菊酒を飲み、菊の花をめでる風習があったそうですが、あまり一般化しなかった様です。
民間ではこの時期に行われていた様々な収穫祭事が習合して九月九日を節日として祝っていた様です。現在でも「お九日」といって九日のほか、十九日・二十九日に収穫祭事が行われている所が各地にあります。
長寿繁栄を願うこの日は、お酒に菊を浮かべて飲み邪気を祓ったとされています。
菊が長命をもたらすと信じられていました。
また重陽の節供は、別名菊の節供とも呼ばれています。
菊の花、菊の絵画や掛け軸、菊の形の和菓子、菊紋様の帯、器など、室礼には菊に関するものを集めて菊づくしを楽しまれてはいかがでしょうか。